2011・秋 秋深し、「どぜう」は何をする人ぞ
―われわれはどこから来たのか、われわれはどこにいるのか、われわれはどこに行こうとしているのか―

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2011・秋(その1)


Aさん―センセイ、野田内閣が誕生してまもなく二月です。野田サン自体は温厚そうな人ですが、日本も世界もとても温厚とはいえない激動が続いていますね。

  

(20年サイクルの異変が世界を覆う?)

H教授―うん、自然災害が多発している。
8月末から日本を窺っていた台風12号は長く停滞し、上陸した後も居座ったまま猛威をふるった。期せずして野田内閣スタートとほぼ同時だったね。未曾有の豪雨を西日本に齎したんだけど、その傷跡も癒えないまま、二週間後、再び台風15号が襲った。
この二つの台風で各地で洪水が起き、大きな被害をもたらしたが、とくに紀伊半島では深層崩壊による土石流が頻発し、堰止湖ができていまも危険がつづいている。死者も三桁に上り、平成最大の台風被害となった。

Aさん―10月に入ると、今度はタイで大洪水、なおも被害は広がってきています。
こうした自然災害の多発はやはり温暖化のせいですか?

  

H教授―さあなあ、ただ海面温度が上昇しているから、それだけ台風のエネルギーは強くなるという話はある。
いずれにせよ、今年に入り、大地震や台風、豪雨といった自然災害が頻発している。東アフリカの旱魃は過去60年で最悪、先日亡くなったマータイさんも心配していたそうだ。
そしてヒト社会でも大きな異変が世界的に起きている。ひとつは国家破産に瀕しているギリシャ危機だ。それがEU自体の枠を揺るがしているし、ギリシャ以外の国々への飛び火も噂されている。

Aさん―米国でも7月末にデフォルト危機が一時騒がれましたね。だから相対的にユーロやドルに比べて円がどんどん強くなっています。

H教授―だけど債務残高の対GDP比は、ギリシャも米国も100%前後。日本は優に200%を超えているから、なにかをきっかけに円が急落し、ハイパーインフレ(→95講その4)が起きることだって考えられないわけじゃないと思うよ。

日米欧主要国債務残高

●http://www.ohmae.ac.jp/ex/kabu/magmail/index150.htmlより引用

Aさん―経済オンチのセンセイが言っても説得力ないですけどね。

H教授―うるさい。ところで、今年に入ってチュニジアに端を発したジャスミン革命だけど、いまも影響力を拡大し続けている。中国へもその影響は及んだし、8月末にはリビアのカダフィ政権も倒れた。シリアだってどうなるかわからない。

Aさん―え? 中国にも?

  

H教授―そうだよ、7月下旬に起きた高速鉄道事故では、鉄道省の拙劣な事故処理に対してネットでの反乱が起き、政府当局の心胆を寒からしめた。これだってジャスミン革命の影響だよ。
それだけじゃない、これまでは途上国、新興国だけだったものが、先進国にまで広まった。

  

Aさん―ああ、米国ウオール街デモに端を発した、各地での格差反対のデモ騒ぎですね。

  

H教授―うん、カリスマ的なリーダーもおらず、政治党派も表に立たず、ネットつながりで街頭に出ていくというのは、ジャスミン革命そのものだ。
日本でも自然発生的に反原発デモが起きているのも、それと同じ文脈だろう。
ぼくが思いついた仮説だけど、20年サイクルで革命や反乱の波が起きるんだ。ちょうど今年でその20年サイクルの高揚期に入ったんだ。

Aさん―へえ、20年前になにかあったんですか。

 

H教授―90年前後に東側陣営でドミノ倒しのように市民革命が起き、つぎつぎと政権が倒れていった。ベルリンの壁だとか、ソ連崩壊と言うのを習ったことがあるだろう?

Aさん―その20年前は?

H教授―70年ごろ先進国では若者の反乱が燃え盛った。パリの5月革命、米国のSNCCやブラックパンサー、ドイツの赤軍、日本でも東大・日大などの大学闘争や反戦運動が全国で展開され、過激な実力闘争もあった。

Aさん―そのまた20年前は?

H教授―いまのアジアの途上国・新興国では、1950年前後は植民地解放闘争の最盛期だった。第三世界と言うのが、世界の耳目を集めだしたんだ。

Aさん―う〜ん、20年サイクルか。でも、センセイが言っても、だれも信じませんよ。

H教授―うるさい、キミがなんと言おうと、ぼくはジャスミン革命と米国の格差反対デモは見えぬ糸でつながれていて、それがますます大きなうねりと化すんじゃないかという気がしてならないんだ。日本の草の根反原発運動もそれに影響を受けて、もっと広がるんじゃないかな。もちろん、仇花に終わってしまうかもしれないけどね。

(野田内閣はヤジロベエかー官僚主導に逆戻り? 脱原発依存失速?)

Aさん―なんかセンセイ、学生時代のトラウマにとらわれてません?
さ、さっさと本題に入りましょう。東日本の復興とフクシマに入る前に、野田サンの方向性について、どう思われます? なんだかワタシは官僚主導に急速に戻りつつあるんじゃないかと思うんです。
前原サンが中止を宣言した八ツ場ダム(→81講その2)も、9月には国土交通省関東地方整備局の検証で、ダムが一番安上がりだなんてお手盛りの発表。野田サンが任命した国土交通大臣は建設省河川局長上がりで、どうやら工事再開の方向に動きそうです。
泡瀬干潟(→ 71講その291講その1)も今月に入って、司法判断を事実上無視して埋め立て工事を再開しました。 諫早の水門だって、司法判断を曲解して一番小規模な開門しかしない方向のようですし(→96講その1)、一方、野田サンは財務省の言うがまま大幅増税も言い出しました。

H教授―それだけじゃあない。ストップしていたままになっていた辺野古のアセスメント手続きを進めることを宣言した。
沖縄県の仲井真知事はかつて普天間基地の辺野古移転(→21講その191講その1)を認めたことがあるから、なんとかしてくれるんじゃないかという安易な期待かもしれないが、辺野古を抱える名護市長は反対派だし、仲井真サンも前の知事選では県民の声に押されて県外移転と言わざるをえなくなってしまったから、そうは問屋がおろさないだろう。
野田サンは財務省や国土交通省だけでなく、防衛・外務官僚に対しても言うがままという感じがしないわけでもない。もちろん、官僚の受けはいいだろうがね。
    ただ、官僚主導に相当程度逆戻りしたのは確かだが、朝霞の公務員宿舎建設は世間の批判に押されて断念したから、完全に旧態に復したわけじゃないだろう。

Aさん―脱原発依存のほうはどうですか。失速したような気がしないでもないんですが。

H教授ー野田サンも枝野サンも、菅サンほど脱原発依存に歯切れがよくないしね。
ただ脱原発依存が失速したとは簡単には言いきれない気がする。
エネルギー基本計画(→85講その196講その22011夏その4)の見直しを話し合う、経産省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会のメンバーは、事務局案では大半を原発推進・容認派の面々で固めていたらしいが、それを却下し、原発反対・批判派を1/3くらい入れたというからね。

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