2012・夏 Hキョージュ、エネルギー政策の裏側を衝く

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2012・夏(その1)

H教授―世界は新たな段階に達したと言うか、大きな曲がり角に立っていると思わないか。

Aさんーわかりました! ヒッグス粒子の発見ですね。質量を与えるというヒッグス粒子の発見で、ついに標準理論の残されたピースが埋まりました。あとはダークマターとダークエネルギーの探索です。

H教授―…そっち方面はボクにはちんぷんかんぷんだ。
大体、環境行政時評でなぜヒッグス粒子の話をしなきゃあいけないんだ。
RIO+20の話に決まってるじゃないか。ストックホルムから40年、そしてリオから20年という国際的な会議、「RIO+20」が先日行われたんだけど…


(RIO+20の顛末)

Aさんーマスコミ的には盛り上がりに欠けましたね。

H教授グリーン経済 の理念を盛り込んだ「我々が望む未来」という宣言を採択したが、
具体的な目標や政策に言及できず、「お経の文句」に終わった。(1)
40年前、20年前と大違いだ。辛うじて成果と言えるのは2015年以降の「持続可能な開発目標(SDGs)」を策定する交渉に着手することを決めたくらいじゃないかな。(2)

Aさんーそもそも世界各国のトップクラスが参加しなかったですものね。

H教授―オバマさんは大統領選が近いと言うことで欠席。米国では環境問題に熱心だということはマイナスポイントになるらしい。本来牽引役になるはずのドイツのメルケルさんも英国のキャメロンさんも、ギリシャの経済危機でそれどころじゃなかったというのが痛かったね。

AさんーでもNGOなど数万人が集まったんでしょう。日本の評判はどうだったんですか。

H教授―ふふ、地球環境政策に詳しいボクの友人のMさんが行ってきたんだ。いろんな国や機関のサイドイベントを見てきた所見を送ってくれたんだけど、その一部を引用しよう。
「ドイツ、フランス、韓国、世銀、中国などはそれぞれ独自のポジションとアジェンダ(戦略)を持ち、それを有志国との連携により拡大・展開しようとする様子がうかがえる。(それに)比するとJapan Dayおよび日本の公式イベント(”Future Cities We Want”)は、発表者・発表内容・出席者とも「日本人による日本のための日本のイベント」の性格が強い。(日本に戦略はあるのか?日本には既得権益を持つ経済界の短期的利益に反する低炭素社会の構築、グリーン経済を推進する覚悟がないことを各国に見透かされているのではないか)」


(消費増税と「人からコンクリート」への大逆流)

Aさんーうーん、情けないですねえ。
野田サンもはじめからRIO+20には参加するつもりはなかったようです。
小沢サングループとの訣別覚悟で、税と社会保障の一体改革という建前の消費増税に突進してましたから、それどころじゃなかったんでしょうね。

H教授―うん、おまけに原案にあったお金持ちの所得税や相続税のアップは、海外に逃げられるおそれがあるという自民党の猛反対でさっさと引っ込めちゃった。
で、社会保障のほうはどういう風に改正するのか分からないまま先送り。
なんだか財務省の思うままに操られている感じがするね。

Aさんーセンセイは消費増税をどう思われますか。

H教授―消費税かどうかはともかくとして、税を上げざるをえないのは事実だと思う。
でも同時に「コンクリート」は極力抑制するのが当然だろう。ところが、一方では新幹線未着工3区間の工事を認可したり、東京外郭環状道路の建設を決めたり、新名神高速の工事凍結を解除したりと国土交通省のやりたい放題。
もう今の民主党政権は完全に官僚の思うがままだね。
環境省だけが政治家に振り回されているみたいだが、あとの省庁はほんとにしたたかだ。

Aさんー自民党はどうですか。

H教授―発想や政策は昔のままで、もっとどうにもならないさ。
自民党が国会に提出した国土強靭化基本法では、なんと今後10年間で200兆円の公共投資を行うなど、民主党以上に愚劣だ。 (3)

Aさんーじゃあ、やはり小沢サンの言うように、消費増税に反対すべきなんですかねえ。

H教授―増税反対派は概して不況時には増税すべきでないという意見なんだが、じゃ増税せずにどうすればいいかというと、景気振興策をとるべきだという。
でも、その中身はというとやっぱり公共事業、つまりコンクリート重視なんだ。
こんな体たらくじゃあ、ボクは大っきらいだけど、次の選挙は「維新」が一人勝ちになっちゃうんじゃないかな。


(大飯原発の再稼働強行)

Aさんーうーん、センセイはいずれ耐用年数が来たハコモノですら、すべては更新できなくなるだろうと仰ってましたが、現実はまったく逆なんですね。
ところで、ペットのミオちゃんがなくなってまもなく100か日、忌明けですね。ご愁傷さまでした。


       〜在りし日のミオ〜


H教授―ペットなんて呼ぶんじゃない。美生=ミオは家族そのものだったんだ。いまではこういう愛犬や愛猫などをコンパニオンアニマル ということが多い。伴侶動物だね。動物家族と言ってもいいかもしれない。
で、東日本大震災では多くの人たちが突然の避難生活を強いられ、こういう動物家族と離れ離れになることも少なくなかった。ただ、三陸の人たちはその後自由に行き来できるようになったから、再会の喜びに溢れることもあったろう。でも…

Aさんーそうかフクシマですね。

H教授―うん、愛犬、愛猫、或いは手塩にかけて育てた牛などの家畜を置いて避難せざるをえなかった。そして帰ることは長い間、叶わなかったし、いまでも叶わない人も多い。いや、それ以上に、原発の周辺地域では津波で行方不明になった人の捜索さえできなかったんだぜ。

Aさんーそういう人たちの悲しみと怒りを思うと、コトバを失ってしまいますね。

H教授―うん、ミオはいわばまっとうな死だ。それでもボクにとっては耐えがたい悲しみだ。だとすれば、愛するものとの突然の理不尽な離別や死別を余儀なくされた人々の怒りと悲しみはどれほどのものだろうか。
ボクもミオを喪って、はじめてそういう人たちの深い悲しみの一端を実感できるような気がした。

Aさんーにもかかわらず、大飯3、4号が再稼働しました。
橋下サンや関西広域連合も最後は腰砕けみたいに容認しちゃいました。

H教授―広範囲の停電になったときの非難を恐れたんだろう。
橋下サンの「夏だけ再稼働すればいいじゃないか」というセリフは、本質を衝いていて面白かったのにな。

Aさんーどういうことですか。

H教授―政府が再稼働を急ぐ理由は、当初はひたすら夏のピーク時に電力が供給できなくなるということだった。

Aさんーその通りじゃないんですか。

H教授―だったら橋下サンの言い分はもっともじゃないか。原発は立ち上げと停止のときが一番注意が必要だし、だからこそ一旦臨界 (→18講その3)に達したら、一年間はベース電源として運転し続けてきたんだけど、1,2カ月だけ運転すると言うこと自体は技術的には不可能ではない。でも、それだと関電は困るんだ。

Aさんーどうしてですか。

H教授―それじゃあ関電は儲からないからさ。火力発電は燃料代がかかる。だからこそベース電源を原発に任せることで利益を上げてきたんだ。原発は初期投資は莫大だが、今程度の安全対策だったらそのあとのコストは廉いからな。

Aさんーそりゃあそうかも知れませんが、15%節電要請に加えて、計画停電なんて言い出したくらいですから、夏のピーク時には足りなくなる恐れも、事実としてあったんじゃないですか。

H教授―ないとはいわないが、あるとしても延べで数十時間くらいじゃないかな。
そのための対応として節電を言い出したのはいいが、そのあといきなり計画停電なんて言い出すからおかしくなった。
だって、電気事業法に基づき経済産業大臣は 電力使用制限令 、つまり強制的に大企業等を対象にした電力の供給を制限することができるんだ。だったら計画停電などする前に、強制的に大工場などはピーク時は操業停止、臨時バカンスを導入させることだって考えられないわけじゃない。

Aさんーそうか、学校に夏休みがあるように、大工場も一月くらいの夏休みを義務付ければいいんだ。或る意味では非常事態なんですから。

H教授―それに大口需要者の電力料金は家庭用より廉い契約で、その代りピーク時の供給制限ができるような仕組みになっていたはずだし、節電したらその分以上に電力料金を下げるシステムとか計画停電以前に考えられることがいろいろあるじゃないか。

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参考リンク

(1)   【リオ+20 我々の望む未来と森林(2012/6/23)】
http://homepage2.nifty.com/fujiwara_studyroom/kokusai/rio+20portal/rio+20portal.html
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  • (2)   【【グリーン経済は失速】15年に新たな開発目標  リオ会議が閉幕】
    http://www.47news.jp/47topics/e/230804.php
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  • (3)   【国土強靭化基本法案 概要】
    http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-118.pdf
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