最終時評―2013年の環境政策のみどころ

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2013・冬(その3)

(温暖化対策―2020年目標をどうするのか?)

Aさん―あ、そうか。温暖化対策ですね。

H教授 ―うん、昨年末のCOP18では、先進国の中で唯一温室効果ガス削減の2020年目標を実質的に定めておらず、思いっきり白い目で見られた。
COP18は最終日を一日延期して、ようやく合意事項を採択した。ドーハ合意だけど、「ドーハ・クライメート・ゲート」と呼ぶそうだ。ポスト京都新体制への入り口という意味だが、まだ入り口には入っていないというほうが正確だろう。

Aさん―どんな内容なんですか。

H教授 ―五つのことが決まった。
まずは第二約束期間を2013年〜2020年とした。つまり京都議定書延長期間を8年としたんだ。

Aさん―でも延長京都議定書に日本は参加しないんですよね。(自嘲)

H教授 ―うん、だからペナルテイが科されることになった。
途上国への資金・技術協力の代償として、途上国での削減排出量を自国の削減排出量にカウントできるCDMだけど、その活用に制限が加えられた。

Aさん―うーん、二番目は?

H教授 ―途上国支援の強化だ。これが一番もめて日米が最後までその具体化に拒否反応を示し、抽象的な支援強化の表現にとどまった。
三番目が気候変動による損失と被害に取り組む制度の設立だ。

Aさん―2020年からのポスト京都の枠組みの中身については?

H教授 ―その議論には入れなかった。
新たな枠組みの中身は2014年のCOP20までに骨子をまとめ、2015年COP21で採択を目指すというスケジュールだけが合意された。これが四番目のポイントだ。
最後に2020年までに各国は削減目標量の上乗せについて、今年から具体的な検討に入ることとされた。

Aさん―日本はCOP18の交渉では存在感を示すことはできたんですか。

H教授 ―延長京都議定書には参加せず、環境大臣は最終決着の前に帰国しちゃったんだぜ。ムリに決まってるじゃないか。いずれにせよ前途多難なことには間違いない。
そもそもカタールなんて、一人当たりのCO2排出量は世界一の国だぜ。そんなところが議長国になること自体、問題だと思うけどなあ。
来年のCOP19は、ポーランドのワルシャワに決まった。

Aさん―ところで鳩山さんの言った、2020年25%カット(→81講その1)は断念したんですね。

H教授 ―あの時点では公式には断念してなかったはずだが、事実上断念していること、そして新たな目標を定めていないことは、当の日本政府も含め、誰の目にも明らかだった。

Aさん―だったら、せめて年末のCOP19のときには、新たな2020年目標を定めなきゃいけないですね。

H教授 ―常識的には、電源別割合を明確にしておかなきゃ決められないだろう。
だが、自民党の政権公約は「原発再稼働の可否は、全ての原発について三年以内の結論を」目指し、「10年以内には将来にわたって持続可能な『電源構成のベストミックス』を確立」するというものだ。
これで、どうやって今年中に2020年の削減目標を決められる?
ここでも年内に安部サンがーと言うか、自民党自体が進退谷まる事態が想定されるよね。つまりいわゆる第三極も含め、政界再編成がどうしても必要になってくる。


(海面上昇予測が大幅にアップ?−温暖化最新情報)

Aさん―ふふ、センセイの予測と言うより、希望的観測じゃないんですか? 
ところで、海面上昇の予測がアップするかも知れないそうですね。

H教授 ―ゴアさんの「不都合な真実」なんかでは、グリーンランドの氷床が全部溶けて何メートルも海面が上昇するなんて言ってたけど、IPCC第四次報告書では、極地の氷床の融解速度は不明な点が多いとして、その影響をカウントせずに、今世紀末で18〜59センチの上昇と予測していた。(→41講その249講その2
ところがここ数年の研究では、南極・北極とも予想以上の融解速度だという報告が相次いでいる。今世紀末にはメートル単位の海面上昇を憂慮する声もあがっている。なかには6メートル上昇するなんて話も出ているんだ。
来年にはIPCCの第五次報告書がまとめられると思うが、そこでどういう統一見解が示されるかに注目しておく必要がある。


(画期的な?アベノミックス)

Aさん―ひぇー、おっそろしい…
温暖化対策のほうもきちんとしてほしいんですが、聞こえてくるのは経済、経済って騒ぐアベノミックスばかりです。
デフレと円高からの脱却により、雇用確保とGDPの大幅アップを目指すそうです。
そのため、インフレターゲットを設けて大胆な金融緩和を行い、公共事業を中心としたインフラ整備をやると言ってます。
国費10兆円、事業費規模では20兆円という、国土強靭化と称する公共事業を中心とした超大型13兆円の今年度補正予算を発表し、先月末には92.6兆円に達する大型の来年度政府予算案を発表しました。
センセイはアベノミックスをどう思われますか。

H教授 ―ぼくは経済オンチだから、アベノミックスがうまくいくかどうかはわからないが、直観的には、バブル崩壊のあとの経済政策と一緒のような気がする。
大型公共事業で景気を立て直すとして、ばんばん国債を発行した。これが今の1000兆円という借金につながっている。
にもかかわらず、あのときも景気は回復せず、環境を破壊したばかりだった。どうもその二の舞になるんじゃないかな。

Aさん―「人からコンクリート」への転換が進んでいくわけですね。
環境破壊を招きかねないいろんな公共事業が始まりそうですが、アセス法を改正して配慮書規定を入れることにより、戦略アセスなるものを導入したそうですから、環境省はそうならないよう、環境アセスメントをしっかりやってほしいですね。(→2012秋その4
それにデフレをもし克服できれば、一気にハイパーインフレになだれこむ危機だってあるかもしれないですよね。(→84講のカット分
それに、そもそもそんな膨大なオカネを適正に執行できるんですか。

H教授 ―うん、公共事業を適切に執行するためのマンパワーが圧倒的に不足している。
いま、環境省がやっている除染事業もそうだけど、ゼネコンに丸投げして、とんでもない不祥事を起こすのが関の山じゃないかな。
それに復興工事だとかフクシマ関連事業は3Kで敬遠されがち。だからこそ慢性的な人手不足だったんだけど、それがもっと顕著になるんじゃないかな。

Aさん除染の不正作業が問題になっているのは、それが遠因なんですね。

H教授 ―そもそも除染と言うスキーム自体に、疑問を持っているけどね。(→2011秋その3


(自民党は勝利したのかーもう一つの選挙総括)

Aさん―アベノミックスってなんだか危うそうですね。
でもそんな安部サンというか自民党を、国民は年末の総選挙で支持したことだけは間違いないんですよね。

H教授 ―民主党が支持を喪ったのはその通りだけど、決して国民は自民党を選んだわけではない。選挙制度のマジックで自民党が大勝したようにみえるが、3年半前の総選挙とくらべてみると決してそうじゃないことがわかる。
総投票数は前回が7,000万票、今回は6,000万票と1,000万票の減。
で、比例区での自民党の得票率は26・7%から27.6%とほぼ同じで、獲得投票数は1,880万から1,660万票とむしろ減っている。一方、民主党は3,000万票が900万票に激減している。

Aさん―つまり、前回の民主党勝利をもたらした大量の浮動票の半分近くが棄権、そして半分強が、いわゆる「第三極」に流れたってわけですか。
で、その第三極自体が三つに割れたから、自民党が漁夫の利を得たというわけですね。

H教授 ―だけどその自称第三極がひとつにまとまるはずもない。
官僚主導はケシカラン、地方分権を進めよだけが共通点で、外交・防衛政策も経済政策もTPPもエネルギーもばらんばらんだから、まとまれというほうがムリだろう。

Aさん―三極のなかでは「未来」がもう少し支持されるかと思ったんですが、まったくダメだったですね。おまけに選挙が終われば、あっという間に割れちゃいました。
やはり小沢サンとくっつくべきじゃあなかったんでは?

H教授 ―検察がフレームアップしてきた小沢サンだけど、裁判で無罪が確定した。「疑わしきは罰せず」の灰色無罪でなく、真っ白という判決だった。
つまり現行法を前提とする限り、冤罪というしかないものだ。
でも、依然として全マスコミの小沢バッシングはとまらない。マスコミが「未来」に冷淡だったのも、その延長線上だろう。あまりに異常だね。
小沢サンは剛腕だと謳われていた。ボク自身は小沢サンの政策は、旧来のバラマキ型土建屋政治の域を出ていないと思うから、支持しないんだけど、剛腕と言うのがホントかどうか、一度くらいはテストしてみたかったという気がする。


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