秋色深し、日本環境行政

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2014・秋(その1)

Aさん ― センセイ、いよいよ解散総選挙するそうです。

Hキョージュ ―ばかげているねえ。大義もないし、何百億と言う国費の無駄づかいだ。 ペルーで開かれる気候変動枠組条約COP20の開催期間が選挙期間になるんだぜ。

Aさん ― それにしても夏から秋にかけてはいやというほど自然災害が続きましたねえ。

Hキョージュ ― うん、夏からずうっと断続的に豪雨に襲われ、9月の末に今度は御嶽山が噴火し、多くの犠牲者がでた。そのあともまた毎週末に連続して台風が日本を直撃したものなあ。

Aさん ―犠牲になられた方々には心からお悔やみ申し上げましょう。

御嶽山噴火と火山災害

autumn and A san

Hキョージュ ―豪雨や台風の頻発と大型化については、海水温上昇が関係しているらしい。海水温の上昇は温暖化=気候変動の影響だろうな。 また、蔵王とか霧島とか3/11以降、日本全体で火山活動が活発化しつつあるという見方もあるようだけど、御嶽山の噴火が、それと関係あるかどうかはわからない。今度の噴火はマグマが噴出したのでなく、地下水がマグマと接して蒸発、それにより爆発した水蒸気噴火とか水蒸気爆発と言われるものだ。規模としては小さいもので、被害の範囲は頂上周辺だけだけど、さわやかな秋の土曜の昼に突然噴火したため、あれだけの犠牲者を出してしまった。     

Aさん ―こわいですねえ。日本の地下ではいくつものプレートが押し合いひしめき合って、地震と火山の巣だそうですが、火山って一体日本にいくつあるんですか。

Hキョージュ ―うーん、なにを火山というかだな。マグマが噴火などで地表に出てきて急速に冷えたのが流紋岩、安山岩、玄武岩などの火山岩で、至る所に分布している。その分布域を全部火山と言っても間違いじゃない。 

Aさん ―でも、あまり古いと浸食等で元の山の形が残ってないんじゃないですか。そんなものを火山と言ったって…

Hキョージュ ―うん、だから地質年代表で一番新しい「新生代第4紀完新世」、昔は「沖積世」と言われていた時代に噴火したものを「活火山」と言うようにしている。1万年前から現在までだ。
それ以前のものは「その他火山」とでも言えばいいのかな。かつて洪積世と言われていた第4紀更新世というのは260万年前から1万年前を言うんだけど、その間に噴火した火山なら、その当時の地形をのこしていることも多い。だが、さすがにそれ以前の第3紀に噴火したとなると、もうそのときの地形は残ってないことが多いんじゃないかな。火山に関連する活動もほとんどなくなっているだろうし。  

Aさん ― じゃ、死火山とか、休火山とかいうのは?

Hキョージュ ―はは、随分古いコトバを知っているんだな。誰の目にも火山とわかるもののうち、2000〜3000年前以降のいわゆる有史時代に活動の記録のないものを死火山、噴火した記録はあるが今は活動しているように見えないものを休火山と言った。だが今ではそんな区分は本質的でなく、無意味だとされて死語になった。 御嶽山も1979年の噴火まで記録がなかったので、昔は死火山と言われていたんだ。
活火山は110あるとされている。そのうち噴火頻度の高いものや、噴火すると社会的な影響の強いもの47については地震計などで常時監視していて、御嶽山もその一つだった。  

Aさん ―火山災害対策はなにかあるんですか。

Hキョージュ ―噴火をとめることは不可能だ。シェルターのようなものは必要だが、効果は極めて限定的だろう。だから常時観測をしてその結果で、入山規制をしたり、避難したりするのが基本的な対策になる。一応気象庁では30の火山を対象に5段階の噴火警戒レベルを示している。レベル2からが規制とリンクしている。 

Aさん ―気象庁が規制権限をもっているんですか。

Hキョージュ ―いや、規制は地方自治体だ。災害対策基本法と言う法律にしたがって自治体は地域防災計画と言うのを作ることになっていて、そのなかで防災のための規制について書くようになっている。火山と関係ある自治体の地域防災計画では、防災のためのいろんな規制が気象庁の噴火警戒レベルとリンクさせてあるんだ。 

Aさん ―そうか以前に富士山の入山規制(→2013夏その1)という話がありましたが、過剰利用対策としての入山規制だけじゃなく、災害対策としての入山規制もあるんですね。 5段階のレベルで言えば当然今回はレベル2の「火口周辺規制」にしなければいけなかったんじゃないですか。だのにレベル1の「平常」だったんでしょう?

Hキョージュ ―レベル2は噴火が予想される場合だ。確かに微小地震は増えていたが、それだけで噴火の予兆とは必ずしも言えないから躊躇した。空振りに終わる可能性が高い場合、規制するのは容易ではない。 

Aさん ―例え空振りに終わっても、火口周辺規制すべきじゃなかったんですか。

Hキョージュ ―そりゃそうだし、ボクもそう思うよ。ただそうは言っても難しい事情もある。 御嶽山は、木曾ヒノキの林業との関係で例外的に指定されてなかったけど、多くの火山は国立公園に指定され、国民の利用に供されている。火口周辺に売店や休憩所があって観光地にもなっているところも多い。
御嶽山も7合目までロープウエイがあり、山頂周辺には山小屋も営業している。   

Aさん ― つまり火山観光で生計を立てている人も多いし、観光に期待している地元自治体としては、空振り規制には慎重にならざるを得ないということですか。

Hキョージュ ―うん、常時入山禁止にしているのは桜島くらいじゃないかな。 多くの場合、噴火は必至とわかった時点で、或は噴火が始まって慌てて火口周辺規制、入山規制ということになりがちなんだ。  

momiji

Aさん ― 危険防止という観点からは、火口周辺は常時入山規制し、売店や山小屋もなくしていくべきじゃないですか。 

Hキョージュ ―そんなこと言ったって、多くの火山はずうっと昔から観光の対象だったから、そうはいかないだろう。それに多分国民もそれを望んではいない。富士山登山を常時禁止することなどできるわけないだろう。
火山は地球の鼓動を知る絶好の教材だし、大きな感動と感銘を与えるものだ。 規制強化自体は賛成だが、やはりよほどのことがない限り全面シャットアウトすることはやめたほうがいい。  

Aさん ― じゃ、どうすればいいと… 

Hキョージュ ―今回の場合微小地震が増えていた。それだけで噴火の予兆とはいえないにしても、噴火のリスクが増えたことは間違いない。だがその情報は自治体どまりだった。やはり、そのことを広く知らせることは必須だと思う。登山者の方もその情報を踏まえて、登山の延期や断念を検討したり、決行するのであれば、ヘルメットやマスクを着用することも必要だろう。 

Aさん ―そういえがばセンセイは昔、レンジャーとして霧島のえびの高原に駐在されてましたよねえ、ここの硫黄山から半径1キロが立ち入り規制されたそうですよ。

Hキョージュ ―御嶽山の教訓か、えびの高原の硫黄山は気象庁の警戒レベル対象にしている30には入ってないが、福岡管区気象台は火口周辺警報(火口周辺危険)を出した。レベル2相当ってわけだ。それを受けて地元・えびの市では、関係機関からなる霧島山火山対策連絡会議を開いた。えびの市の地域防災計画ではこの連絡会議の助言を得て、規制できるようになっている。連絡会議では県や霧島周辺の自治体、防災機関などが協議し立ち入り禁止の助言をし、それに基づき規制したんだ。えびの高原につながる道路も、一部規制となっている。
ま、今度のことで火山がいかに危険か、そして予知がむつかしいかがわかっただろう。  

Aさん ― 救助や観測と予報、防災対策などは誰が担っているんですか。

Hキョージュ ―関係省庁や組織は主たるものだけで、警察、消防、自衛隊に気象庁、国土交通省、文科省とさまざまで、調整がきちんと取れているのか心配だ。 場合によれば、屋上屋を重ねるようなものにしないという前提で、防災庁のようなものを考えるべきかも知れない。
そして原発を考える時も、火山のことは考えなくちゃいけない。  

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