春は来たが…

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2014・春(その1)

前説 ーAさんの怒りと悲しみー

Aさん ―センセイ、前回は1月、冬の真っ盛りでした。厳しい寒さと繰り返しの豪雪でしたね。それから3か月、ようやく春は来ましたし、いよいよGWですが、日本も世界も一向に春が来ませんね。

Hキョージュ ―ん? どういうことだ。

Aさん ― 1月末には「Nature」誌にSTAP細胞論文が発表され、リーダーの小保方サンの笑顔はニホンを明るくしましたが、あっという間に失墜し、泥沼の様相を呈しています。

Hキョージュ ―そうだったね。で、2月には都知事選。元妻の片山さつきさんへのDVは酷かったみたいだし、複数の愛人に子供を生ませた挙句、養育費を値切る裁判を起こしたり、生活保護を受けている実姉への市からの援助要請をにべもなく拒否したりと、人間性に?マークがつくような、スキャンダルまみれのオトコが都知事になった。

Aさん ―アタシも残念だったですが、でも、センセイ、政治家に必要なのは正しい政策の作成・展開能力であって、人格者である必要はないっておっしゃってませんでした? 政治は心情倫理でなく責任倫理だとも。確かマックス・ウエーバーでしたね。

Hキョージュ ―そりゃそうだけど、モノには限度ってものがあるだろう。 都知事選では、細川=コイズミさんは宇都宮サンとの一本化に失敗し落選。コイズミ劇場再現はならなかったが、つい最近も脱原発社会を目指すとして一般社団法人「自然エネルギー推進会議」を立ち上げると発表した。

Aさん ― そうだったですね。さすが元ソーリコンビ、意気軒昂、天を衝く勢いです。

Hキョージュ ― ボクの若き日のアイドルでマドンナの吉永小百合サンも賛同人になられるそうだ。

Aさん ― ハイハイ、よかったですね。 一方、二月初めからウクライナが血腥くなりました。首都の騒乱状態のなかでロシア寄りの大統領は逃亡を余儀なくされ、反ロシアの暫定政権が誕生。そうするとロシア系住民が多数を占めるクリミア自治共和国は住民投票によりロシアと併合すると発表。その後もウクライナ東部ではロシア系住民が警察や市庁舎を占拠するなどの流動状態がつづき、この先どうなるか見当がつきません。国際社会ではロシアを非難する声が強いですが、どう思われます。

Hキョージュ ― むずかしいねえ。そもそもウクライナの暫定政権に政権としての法的正当性はないものなあ。 民族自決の原則と言うものもあるにはあるが、どこの地域だって、少数派民族も混在しているのがふつうだ。民族と国家の関係にうっかり手をつけると収拾がつかなくなるおそれがあるので、国際社会でも、国家からの離脱は今までタブーになっていたんだ。だからクリミアの件は「パンドラの匣」を開けちゃったことになる。

Aさん ― 日本国内もなんとなくきなくさい動きがとまりません。安倍サンは集団自衛権の容認に突っ走りはじめ、NHKの人事も壟断。政治任命した法制局長官はトンデモ発言を繰り返しています。そんななか、民主党は低迷を続けるばかりですし、一時「第三極」と、もてはやされたみんなの党や維新も内紛や混乱が続き、安倍サンの支持率は依然として高いまま、オバマさんを迎えることができました。

Hキョージュ ― 維新は石原サンと野合して以来、橋下旋風もすっかり下火になった。一方、みんなの党については、今月に入って露見した渡辺サンのスキャンダルは猪瀬サン以上だ。これじゃあ、多くの国民が見限るのも当然だろうな。 安倍政権だが、世論調査を見る限り、原発にしても集団自衛権の容認にしても、否定的な声の方が強いのに、支持率が高いって、ホント不思議だね。

Aさん ― ヘンテコな事件、というか悲劇も起きています。3月のマレーシア航空行方不明事件が解決しないうちに、韓国の大型旅客船の惨劇が起きました。

Hキョージュ ― 船長や乗組員が真っ先に逃げ出したものねえ、ヒドイ話だ。100年前のタイタニックは悲劇だったけど、これは惨劇というしかないねえ。多くのなくなられた乗客の冥福を祈ろう。

Aさん ― ホント、暗い話ばかりですねえ。一体、日本は、世界はどうなっちゃうんですか。

Hキョージュ ― ま、気持ちは分からないでもないが、ここは政治ゼミじゃなくて、環境ゼミだから。

Aさん ― 環境の方もそうです。 フクシマの汚染水はとまらないまま、原発再稼働の動きは加速しています。 そして三陸では住民の意向も聞かず、大規模な防潮堤一本槍。 3/11から3年。何一つ教訓から学んでないじゃないですか。

Hキョージュ ― まあ、気持ちはわかるけど、そう悲観的になりなさんな。そのうち必ず好転するよ。

Aさん ― えっ、ほんとうですか? 根拠は?

Hキョージュ ― 止まなかった雨はない、明けなかった夜はない。(きっぱり)

Aさん ―はあ、それが根拠ですか(肩を落とす)

Hキョージュ ― 水俣病の認定基準自体は変えなかったが、新たな運用指針が出された。従来は複数の症状を事実上の必須要件としていたのを、条件付きながらも手足の感覚障害だけでも認められるとしたことは一歩前進だろう。(→22講その3、2012春その4) さあ、ボチボチ本番と行こうか。まずは温暖化=気候変動をめぐる動きだ。


T IPCC第五次評価報告書とCOP20―第2・第3作業部会報告書公表

Aさん― 日本の2008年〜2012年の温室効果ガス排出量が確定しました。1990年比で8.4%減。京都議定書目標は最終的に達成したそうです。

Hキョージュ ―でも実際の排出量は90年比で1.4%増加だ。議定書で認められた「森林吸収」だとか、京都メカニズムの排出量取引、CDMの活用で、達成したかに見えるのに過ぎない。しかも2008年までは、京都メカニズムを使っても、達成は不能と思われていたところに、いわば「神風」が吹いたんだ。

Aさん― 「リーマン・しょっく」ですね。悲しい神風・・・

Hキョージュ ―うん、日本の場合、温室効果ガスの排出量は、排出抑制対策よりもはるかに好不況の経済情勢が利くなんて余りにも悲しいよね。

Aさん―ところでIPCCの第五次評価報告書ですが、昨年秋の第1作業部会に引き続いて、今月(4月)、立てつづけに第2作業部会、第3作業部会の報告書が公表されました。

Hキョージュ ―まずは第2作業部会から話してごらん。

第2作業部会

Aさん―第2作業部会は横浜で開催されました。報告書は温暖化の影響、適応、脆弱性に関する最新の科学的知見をとりまとめたものですが、内容は予想通りで、より深刻になっているというものですね。

Hキョージュ ―うん、すでに温室効果ガスの増加により、水資源や農作物、生態系など「すべての大陸と海洋で影響が表れている」と断言した。そして主要なリスク分野として食料、水、健康など8つを挙げ、影響の深刻化を予想している。

第3作業部会

Aさん―で、そのあとベルリンで第3部会が開催され、報告書が公表されました。第1、第2部会の報告を踏まえ、より社会科学的な、「温室効果ガスの排出抑制策および気候変動の緩和策の評価」を行ったわけです。

Hキョージュ ―うん、国際的な合意が出来ているのは、産業革命前からの気温上昇を2度以内に抑えようということだ。もうすでに0.85度上昇したそうだから、あと1度少ししかない。IPCCは特定の選択肢を勧めるものではないとしているが、世界中の研究機関で行われた900の削減シミュレーションを分析し、その2度目標が可能かどうかを評価したものだから、「なにをなすべきか」を示唆したと言えるだろう。

Aさん―どんな内容なのですか。

Hキョージュ ―世界の排出量はなお増加傾向にあり、2010年は約500億トン。本格的な削減に取り組まないと、今世紀末には3.7度〜4.8度上昇する。2100年までに気温上昇を2度以内に収めるためには、世界の排出量を2050年には2010年比で40〜70%削減し、2100年にはゼロかマイナスにしなければならないとしている。

Aさん―マイナスにするって?

Hキョージュ ―はは、マイナスはちょっとイメージできないな。

Aさん―大幅削減するにはどうすればいいと言っているのですか。 

Hキョージュ ― エネルギー需要を減らすこと。低炭素エネルギーの電源比率を現状の3割から2050年には8割以上にしなければいけないとしている。

Aさん―具体的には?

Hキョージュ ―水力、太陽光、風力などの再生可能エネルギー、原子力、あとはCCS=二酸化炭素回収・貯留装置付きの火力だ。

Aさん―IPCCも原発に期待しているのですか。

Hキョージュ ―いや、「原子力エネルギーは成熟した低GHG排出のベースロード電源だが、世界における発電シェアは1993年以降低下している。低炭素エネルギー供給への原子力の貢献は増しうるが、各種の障壁とリスクが存在する」という微妙な言い回しをしていて、IPCCのなかでもいろんな意見があることを示唆している。
そして付属文書では原発なしでも可能なシナリオもあるとしている。

Aさん―うーん、つまり一言で言えば、温暖化懐疑論なんて科学の世界では存在せず、極めて深刻で、直ちに国際協力による大幅な排出削減が必要と言うことですね。

Hキョージュ ―問題は、メデイア、ひいては世論の反応が小さかったことだ。どちらも新聞の一面トップにもならなかった。

Aさん―そうですよねえ。新聞も週刊誌も小保方サンの話題が千倍以上も大きく長く取り上げられていますものねえ。この先はどうなるんですか。

Hキョージュ ―小保方サンか? わからないけど、なんとなく彼女って健気な気がするよね。彼女自身はSTAP細胞を作ったんだと今でも思い込んで…

Aさん―(遮って)違います! IPCCの方です!

Hキョージュ ―あ、そっちの方か(照れ笑い)
10月に統合報告書がデンマークで開催される第40回総会で公表される予定だ。

Aさん―それが年末にペルーで開かれるCOP20に連動するわけですね。

Hキョージュ ―連動すればいいんだけどねえ… 原発推進論者は目いっぱい政治的に利用しようとするんだろうね。

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