GWとは無縁に、キョージュ、最新環境トピックを論ずる

高浜原発3,4号機再稼働差止め仮処分決定是か非か、2030年温室効果ガス削減目標策定大詰めに、名は体を表すか・国立公園名称論

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2015・春(その2)

―原発再稼働差止め仮処分命令申立をめぐって 1 基準地震動とは何か―

Aさん ―司法の判断は高浜と川内では真っ二つに分かれましたね。 

Hキョージュ ―裁判官は上司の判断を仰がず、自分の論理と信念だけで判断できるからね。ただ、司法は技術的・専門的事項については、行政が専門家の意見で決めたんだからとして、行政判断をそのまま受容することが多かった。原発などは典型的だね。川内はまさに、その昔ながらの流儀だ。
だが、3.11のフクシマを踏まえ、高浜では裁判長自らが専門的技術的事項に踏み込んだんだ。  

Aさん ―川内はどうしてそうしなかったんですか。

Hキョージュ ―フクシマの反省を踏まえて新たな規制基準ができ、新たな基準地震動を決め、それを規制委員会がOKとしたから、ということだろう。そして残念ながら、今もその流儀が主流だろう。 福井地裁の樋口裁判長は以前にも大飯原発の運転差止めの本訴で同じような判決を出したから(2014夏その3)、この仮処分の結果も想像はついた。大飯の方はすぐに関電が控訴したけどね。 だが樋口裁判長はこの4月1日付けで地裁から家裁に転勤している。今回の判決は異動後だが裁判所法の例外的な規定で出せたものだ。この家裁への配転だって左遷を疑うことが可能だろう。  

Aさん ―そうか、じゃ、この高浜の仮処分について関電はさっそく異議申し立てをしましたが、異議申し立てが認められる可能性が高そうですね。 

Hキョージュ ―まずは基準地震動をめぐる議論を見ておこう。基準地震動ってそもそも何なんだ。  

Aさん ―耐震設計の目安となる基準ですから、考えうる最大の地震じゃないんですか? 

Hキョージュ ―「原子力発電所の耐震設計の基準として、施設を使用している間に極めてまれではあるが発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動のことをいう。」と定義されている。で、基準地震動はガルという加速度を示す単位で表現され、その決め方について、原子力規制委員会は、素人には理解できないような専門用語や数式、グラフが延々と出てくる手引きをつくっている。

Aさん ―つまりそこで考えうる最大の地震で、それ以上の強い地震は考えられないということですね。

原発再稼働差止め仮処分命令申立をめぐって2 ―基準地震動と現実の地震

Hキョージュ ―ふつうはそう思うよねえ。ところが現実にはフクシマも含め、平成17年からの10年足らずの間に、全国17か所の原発のうち4か所で、5回も基準地震動を越える大きな地震が起きている。

Aさん ―ひぇ〜、考えうる最大の地震どころじゃないですね。そりゃあ樋口裁判長の言うこともわかりますね。

Hキョージュ ―この基準地震動の権威である入倉先生のインタビューが昨年3月の愛媛新聞に出ている。愛媛には伊方原発――四電の提出した基準地震動は570ガル――があるからね。そこには驚くべきことが書いてある。 曰く「基準地震動は計算で出された一番大きい揺れの値のように思われることがあるがそうではない」「570ガルじゃないといけないという根拠はなく、もうちょっと大きくてもいい」「基準地震動はできるだけ余裕を持って決めたほうが安心だが、それは経営判断だ」

Aさん ―入倉先生は新聞記事は正確でないと言っておられますし、樋口裁判長が新聞記事をもとに判断したこと自体を非難する意見もありますよね。

Hキョージュ ―ぼくは裁判のことはよく知らないが、証拠や証人は対立する当事者が申し出て、裁判長はその可否を判断するだけじゃないのかな。裁判長自らが証拠や証人を探し出すようなことは普通しないと思うよ。その新聞の記事がおかしいと思えば、関電がそれを立証するための証拠や証人を探し出し、申立てすればよかっただけの話だと思うよ。 それにその新聞記事はぼくも読んだが、中立的な立場から書かれたもので、それについて正確でないとか誤りだと言うようなクレームは入倉先生は付けられなかったらしいよ。 

Aさん ―なあるほどねえ。ところで同じようなことを規制委員会も言ってるのですか? 

原発再稼働差止め仮処分命令申立をめぐって3−新規制基準は緩すぎないか?

Hキョージュ ―基準地震動の地震に襲われても壊れないような「安全余裕」を持つとともに、基準地震動を越す地震が来る可能性もゼロとは言い切れないので、「残余のリスク」のことも考えろと言うようなことは書いてあるが、定量的な記述はない。つまり一個一個の原発について、電力会社の言う基準地震動でいいかどうか、その都度審査すると言うことになる。   フクシマ以外の原発は基準地震動を越えても確かに壊れなかった。ただフクシマに関していえば、原子炉に地震が直接与えた影響は今のところ不分明だが、送電鉄塔が倒れて外部電源を喪失したのは間違いないから、地震は関係ないなんて口が裂けても言えないと思うよ。  

Aさん ―安全余裕を持たせたり、残余のリスクを考慮して、基準地震動を越す地震でもある程度は大丈夫だというのなら、逆にどの程度以上の地震だったら、原子炉が壊れるのか、さっぱりわからないですねえ。なんだか不安だわ。

原発再稼働差止め仮処分命令申立をめぐって4−基準地震動見直し耐震補強工事

Hキョージュ ―じつは耐震の基準として2006年までは設計用最強地震と設計用限界地震という二つの「設計地震動」があった。2006年にそれを「基準地震動」として一本化し、さらにフクシマ後の2014年に改正した。そしてその都度、ガルの値は大きくなった。

Aさん ―そうか、耐震安全対策はそれなりに強化されてきたんですね。  

Hキョージュ ―そうじゃないんだ。耐震補強工事もせず、「調べたらもっと大きい地震ガルにも耐えることがわかりました」の連続なんだ。

Aさん ―マ、マサカ、そんなバカな…

Hキョージュ ― 樋口裁判長の仮処分決定要旨の一部に「本件原発の運転開始時の基準地震動は370ガルであったところ、安全余裕があるとの理由で根本的な耐震補強工事がなされることがないまま、550ガルに引き上げられ、更に新規制基準の実施を機に700ガルにまで引き上げられた。原発の耐震安全性確保の基礎となるべき基準地震動の数値だけを引き上げるという対応は社会的に許容できることではないし、債務者のいう安全設計思想と相容れないものと思われる。」と書いてある。

Aさん ―ひぇえ、そりゃあ、詐欺みたいなもので、ムチャクチャじゃないですか。 センセイはどうすればいいと思われます?

原発再稼働差止め仮処分命令申立をめぐって5−「安全性を全てに優先させ」るのなら…

Hキョージュ ―日本は地震列島なんだ。以前にも言ったが(→2014夏その2)地震計でガルを計測しだしたのは90年代に入ってからだ。原発災害の深刻さを考えれば、どこにつくろうが、たかだかこの二〇数年に日本で起きた最大の地震動くらいに耐えるようにするのは当然だと思わないか? 「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ」ってエネルギー基本計画に書いてあるじゃないか。 

Aさん ― そりゃあ、そうですよね。ところで最大の地震って? 

Hキョージュ ―2008年の岩手宮城内陸地震で岩手県一関で観測された4022ガルだ。ほかにも1000ガルを越えた地震は何度も来ている。それを600ガルだとか700ガル辺りでどうこう言ってること自体、とんでもないと思うよ。 ま、樋口サンの仮処分決定を安井至先生などはリスク0の発想だと批判されておられるが、冗談じゃないとぼくは思うな。一応公正を期するために安井先生の論も読んでご覧。 

COP21に向けて1ー各国の2030年目標おおむね出揃う

Aさん ―ところで3月中旬、サイクロン「パム」は最大風速70メートルという超巨大なもので、直撃された南太平洋の島国バヌアツでは16万人が被災、その10日後には南米チリのアタカマ砂漠では歴史的な豪雨に襲われ、100人以上の死者行方不明者が出ました。気候変動の影響が指摘されています。

Hキョージュ ―海水温の上昇と関係しているんだろうな。温室効果ガスの排出抑制は待ったなし、引き返し不能のポイントオブノーリターンも近いのかもしれない。

Aさん ―各国がそれぞれ定めた2020年以降の定量的な削減目標を年末のCOP21でオーソライズするわけですが、準備できる国は3月末までにその案を提出し、各国が相互にその目標を吟味することになっているんだったですよね。

Hキョージュ ―うん、先進諸国は続々と提出、6月のG7で提出の見通しがたってないのは日本と、温暖化対策に初めっからそっぽを向いているカナダだけだ。 そうしたなかでEUは日本に2030年には2010年比で30%の削減が必要としているし、3月末には英国の担当大臣から日本の関係閣僚に、20G7までに排出削減目標提出を促す書簡を出しており、そのなかでは2030年に少なくとも05年比で40%削減がふさわしいとしている。

COP21に向けて提出された各国の温室効果ガス削減目標
(資料に基づき筆者作成)
国  削減目標と目標年次  海外クレジット分を含むか否か  提出月日 
スイス  2030年に90年比 で50%削減  〇  2/27 
EU  2030年に90年比で 40%削減  ×  3/6 
ノルウエー  2030年に90年比で 40%削減  原則×  3/27 
メキシコ  2030年にBAU比で22%削減。条件次第では同36%削減  × 後者の場合は〇  3/30 
米国  2025年に05年比で26〜28%削減  × 吸収源はカウント  3/31 
ガボン  2025年にBAU比で50%削減  ×  4/1 
ロシア  2030年に90年比で 25〜30%削減  × 吸収源はカウント  4/1 
★BAU比:特段の対策のない自然体ケース(Business as usual)に 較べての効果をいう概念。
★中国は提出準備中。「2030年頃に排出ピーク、以降減少」との案か

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