GWとは無縁に、キョージュ、最新環境トピックを論ずる

高浜原発3,4号機再稼働差止め仮処分決定是か非か、2030年温室効果ガス削減目標策定大詰めに、名は体を表すか・国立公園名称論

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2015・春(その3)

COP21に向けて 2 ―日本の2030年削減目標と電源構成、大詰めに―

Aさん ―日本の見通しはどうなんですか。

Hキョージュ ―前回にも言ったように経産省は長期エネルギー需給見通し小委員会を設けて議論をしてきた。それを踏まえて経産省素案が発表された。それによると2030年の電源構成は原発は20〜22%、再生可能エネルギーは22〜24%だそうだ。さらに新聞情報では2030年の温室効果ガス削減目標案として25%にすることで、経産省と環境省で調整中とのことだ。

Aさん ―どういう議論からそういう結果になったんですか。  

Hキョージュ ―ぼくに言わせりゃあ、まず前提がそもそもひどいんだ。実質GDP は平均で毎年1.7%成長するとし、2013年の531兆円が2030年では711兆円と34%増える想定だ。

Aさん ―へえ・・・?

Hキョージュ ―へえじゃないよ。少子高齢化で労働人口はどんどん減少していくなかで、国全体のGDPが毎年1.7%上昇するなんてありえない。バブル崩壊以降、政府の予測というか願望はことごとく外れ続けているんだけど、まだ懲りないようだ。で、これを前提とすると、資源エネ庁の見通しでは最終エネルギー消費は原油換算365百万klから377百万kl、電力需要は968十億kWhから1177十億kWhにいずれも増えるとしている。 ただし、この予測には最終エネルギー消費と電力需要に関して、これからの省エネ対策・効果を含めていないレファレンス・ケースだとしている。そして、それを含めるとどうなるかという最終予測をようやく出してきた。どうなるかというと2013年と比較して最終エネルギー消費は326百万klと13%減、電力需要は981十億kWhと17%減となる。

Aさん ―最終エネ消費と電力消費の予測をどう思われますか。

Hキョージュ ―3.11以降は政府の予測を外れ、減少気味で推移している。つまり民間のほうがシビアに省エネ節電に努めている。レファレンス・ケースのそもそもが過大見積りと言わざるを得ない。

Aさん ―削減対策と削減効果の見通しはどうですか。

Hキョージュ ―個別に積み上げたような資料が出されているが、結果から逆算したに過ぎないという気がする。2030年の温室効果ガス削減目標の経産省結論――もちろん産業界と事前に談合して――があらかじめあって、そこから逆算したんだと思うな。

Aさん ―なんだか前提が間違っているような…で、その電源割合についても、その委員会や自民党は、原発、石炭火力、水力、地熱のベースロード電源は最低でも国際的な平均の6割が望ましいとしたそうですね。

Hキョージュ ―欧米じゃベースロード電源は減らす傾向にあり、国際エネルギー機関の予測では2030年に50%、2040年に40%としているんだが、そこはほっかむりだ。 13年度は原発1%、火力30%、水力・地熱9%の4割だ。つまり原発を2割以上にせんがために持ち出したのさ。今日の新聞には原発電力の単価が一番廉価だという経産省の新たな電源別コスト試算が出されていて、原発の援護射撃にも余念がない。

Aさん ―2割としても、40年廃炉とすると、例え全部再稼働しても2030年には到底無理じゃないですか。

Hキョージュ ―うん、11〜15%にしかならない。だから40年原則廃炉と言いつつ、次々と延長したり、リプレースを狙っている。現に関電の40年経った3基についてはすでに審査がはじまっている。

Aさん ―で、再生可能電源の比率はどうして出したんですか。

Hキョージュ ―2013年は水力8.5%、その他自然エネルギー2.2%の11%弱。それをどこまで伸ばすかなんだけど、出す資料や議論は、再生可能エネルギーを伸ばすのは難しいとかそんな話ばっかりだ。電力会社の自然エネルギー発電の受入量に制限を強める姿勢は変わっていない。経産省もそれを後押しするだけでなく、電力自由化が出現した場合も再生可能電源販売会社に「グリーン電力です」と言った広告宣伝を禁止するなどと言いだしている。 産業界は原発25%、再生可能エネルギーの目標を20%にして調査研究するのはいいが、現実的なのは15%なんてペーパーをその委員会に提出した。
経産省の本音もそうなんだろうが、閣議決定されたエネルギー基本計画では再生可能エネルギーは2割以上と言ってるし、欧州ではすでに30%程度に達している。国際エネルギー機関の予測でも2030年には30%に達するとしている。一方その基本計画では「原発依存度を可能な限り減らす」とも明言している。だから経産省は基本計画の枠内で可能な限り原発を維持する一方で、再生可能エネルギーを増やすのを抑制しようとしている。その結果が、原子力を20〜22%、再生可能エネルギーはそれよりわずかに高い22〜24%で、この委員会でお墨付きをもらおうと考えたんだろう。いずれにせよ先に結論があったんだと思うよ。

Aさん ―だけどその話の大前提は毎年1.7%成長すると言うありえない予測ですよね。現実に例えばゼロ成長しかできなかったら、仮に原発を再稼働するにしても延長もリプレースも不要と言うことにならないですか

Hキョージュ ―誰もその話は明言していないが、多分、その場合は、1.7%成長という前提の下で出した原発割合ではなく、それを前提として想定した原発発電量自体が計画の中身だと主張し、結果的に割合が大幅に超えてもよしとするつもりじゃないか。

COP21に向けて3―環境省、再生可能エネルギー最大導入可能量を試算公表

Aさん ―モウーッ、環境省は何しているんですか。

Hキョージュ ―環境省は長期エネルギー需給見通し小委員会にぶつけるように、独自に再生可能エネルギーを最大限どこまで伸ばせるかについて「2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討委託業務報告書調査結果」を発表した。 最大限の対策を講じた場合、現状程度の場合、その中間と三つのケースで試算。その結果、2414〜3566億kWhの発電が可能だとしている。2030年の電力消費をいずれのケースも現在より減るものとしているが、仮に多めの------資源エネ庁予測よりは少な目だが----1000十億=1兆kWhとしても、最大35%を再生可能エネルギーでまかなえると試算。原発は一応2割としているが、3・11以前の原発発電率を再生可能エネルギーでほぼカバーできることになり、原発再稼働を至上命題としている経産省としては許しがたい結果となる。

COP21に向けて4−日本の2030温室効果ガス削減目標はどうなるか?

Aさん ―そうか、それですぐ経産大臣は非現実的と否定したんですね。 温室効果ガスの削減目標はどうなるんですか。

Hキョージュ ―2020年目標は05年比で3.8%減だから、この延長線上で考えれば2030年は10%未満の削減しかできないことになるし、少なくとも経産省の本音はそうだろう。 だがそんな数字を出すわけにはいかないのは経産省も重々承知していて、目標値としては20%台前半を念頭に置いたんだろう。
産業構造や社会構造の抜本的な変革なしに、毎年1.7%の経済成長を遂げるという前提をそのままにして2030年に20%以上を減らすことはむずかしいんじゃないかと思う。しかも石炭火力の新設計画がめじろ押しで、少々の削減努力を相殺しそうだ。
面白いのは経産省や産業界が原発を推進する理由として真っ先にあげるのが、温暖化対策だ。だが、その温暖化対策の議論の場で、温室効果ガス削減目標値を一番値切るのも経産省や産業界なんだ。

Aさん ―経産省と自民党は一体でしょうから、でもその数字で行くんじゃないですか。

Hキョージュ ―自民党のなかにだって脱原発派の議員がいるし、自民党の再生可能エネルギー普及委員会は電源割合についても再生可能エネルギーを30%以上にせよと決議した。そう簡単にはいかない。一方COP21の場では可能ならば30%、最低でも20%台後半の削減を言わなければ国際社会から完全に孤立すると言うのが環境省。
最後は政治がどう判断するかだが、経産省、環境省の両者を足して二で割れば25%、だからせいぜい25±1%程度で落ち着くんじゃないかな。国際社会からは非難されるだろうがね。
あと起点をどうするか、2005年を基準年とするというのが今までだったが、ここに来て2013年比という話も浮上しているそうだ。そうすれば0.6%ぐらい見かけ上削減率が高くなると言う話で、この±1%とも関連してくる。

Aさん ―情けない話ですが、これから経産省と環境省のその±1%を巡るせめぎあいが始まるんですか。なんか悲しいな。

Hキョージュ ―この時評がアップされる頃には勝負がついているかもしれないぜ。
ぼくとしては大逆転で最低でも30%削減としてほしいところだが、もっと大事なのは、15年も先の話だからと、計画だけ掲げて、実際にはそのための対策を何もとろうとしないことだ。だから単に削減目標だけでなく、そのためのロードマップを明確にしておかなければならない。
そして経産省はあえて無視しているようだが、その先に2050年80%削減と言う先進国共通の目標があり、日本でもそのことは閣議決定されているということを忘れちゃあいけない。

Aさん ―2050年かあ、その頃には水素化社会が実現して、いつのまにか80%カットがなされているかもしれないなんて夢想しているんですかねえ。
ま、いずれにしてもその頃には、センセイはもういないでしょうし、アタシもすっかりおばあちゃんになってるなあ・・・

Hキョージュ ―水素化社会が来る可能性より、ハイパーインフレで日本がぐちゃぐちゃになっている可能性の方がはるかに高いと思うけどねえ。

国立公園論1−国立公園はいくつあるか?

Aさん ―センセイ、最後くらい明るい話で〆ましょう。国立公園と国定公園が増えた話をしてください。

Hキョージュ ―その前に、国立公園は日本を代表する傑出した自然の風景地だし、国定公園はそれに準じた風景地だけど、いくつあるか知ってるか。

Aさん ―…

Hキョージュ ―はは、知らなくてもしょうがない。というか、国立公園や国定公園の数をちゃんと言える人はほとんどいないだろう。というのも、再編成がずうっと進められてきていて毎年変わるんだもの。 この3月に上信越高原国立公園から妙高戸隠界隈の公園区域を「妙高戸隠連山国立公園」として分離独立した。残りの部分はひきつづき上信越高原国立公園のままだ。これで国立公園は32になった。
 なお、上信越高原国立公園は1949年の指定だが、名称をどうするか揉めて、「上信越高原」と造語したんだ。1956年には今回の妙高戸隠地域を拡張したんだが、名称はそのままにした経緯がある。

Aさん ―以前にも分離独立させたところがあったですね。

Hキョージュ ―表をみてもらえばいいが、いくつもある。 それから国定公園でも新たに甑島(コシキ「シマ」)国定公園が県立自然公園から昇格し、これで国定公園は57になった。

Aさん ―えっ? コシキ「ジマ」じゃないんですか。

Hキョージュ ―ぼくもその方が馴染があるんだが、昔から二通りの呼称があったようだ。地本の薩摩川内市では2014年に呼び方をコシキ「シマ」で統一したそうだ。
ま、国定公園では以前にも若狭湾国定公園から天橋立や丹後半島を分離し、大江山と併せて「丹後天橋立大江山国定公園」としたこともあった。今後ともこういう動きはつづくだろう。

Aさん ―なぜそういう独立や再編成ってのが、出てきたんですか。

国立公園論2―2007年、指定および管理に関する検討会提言

Hキョージュ ―うん、環境省は2007年に「国立・国定公園の指定及び管理に関する検討会」を設けて、問題点の洗い出しを行い、検討会から提言を受けた。自然公園行政は、以降はそれの具体化にずうっと取り組んできている。

Aさん ―なにかきっかけはあったんですか。

Hキョージュ ―自然公園法制定50年、その間に自然公園をめぐる社会の変化はすさまじいものがあるので、もう一度原点に立ち返って考え、問題点を洗い出し、今後の方向性を模索しようという趣旨だ。

Aさん ―それでその提言の中身はどうなんですか。 センセイが昔おっしゃってた国有林の特別会計制度を解体し、環境省の国立公園行政に統合させて、公園専用地からなる大国立公園をつくれというようなドラスティックな提言はなかったんですか。(→7講その4

Hキョージュ ―あるはずがないじゃないか(苦笑)。実現の可能性が高そうと踏んだものを提言してもらったんじゃないかな。 指定の方では、現代のニーズに適合しているかという話があった。新たに対応すべきものとして挙げられているのが「照葉樹林」「里地里山」「海域」だ。
海域が海域公園地区制度(→75講その3)や慶良間諸島国立公園(→2014春その4)だ。新たに誕生した甑島国定公園は照葉樹林と海域かな。 

Aさん ―提言はそれだけですか。

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