昏い冬の入り口で

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2017・秋(その1)

Aさん ―  センセイ、前回お話ししたのは8月の末、かんかん照りの真夏でした。今は11月の末。たった3カ月ですけど、その間にいろいろありましたよねえ。北朝鮮の水爆実験にミサイル、台風にハリケーン、突然の解散総選挙ロヒンギャカタルーニャ独立問題、さらにCOP23。そしてあっという間に秋は終わろうとしています。

Hキョージュ ― 今はカタルーニャっていうのか。50年以上昔になるけど、「1984年」のG・オーウエルが書いた「カタロニヤ賛歌」というのを読んだことがある。名著だからキミも読んでみるといい。

Aさん ―  はいはい、まずは解散総選挙の顛末を振り返りましょう。

総括 総選挙

Hキョージュ ―  そうだねえ、総選挙まえの一月は、わけのわからない、そして極めて危険な兆候を感じさせるものだし、ムリヤリ狂騒曲を聞かされている感じだった。       

Aさん ―  安倍サンの解散なんて、ほんとに唐突でしたものねえ。          

Hキョージュ ― 安倍人気が急落。都議会選挙で惨敗し、危機感を抱いたんだろう。しかし最大野党の民進党は党内のごたごたが続いていたし、金正恩の挑発や内閣改造で、内閣支持率低下に歯止めがかかって、今なら楽勝と踏んだんだ。大義なき私利私欲解散で何百億円かが吹っ飛ぶことになった。      

Aさん ―  ところが、それを見越したかのように小池サンが動き、あっという間に「希望の党」を旗上げしました。すると、9月1日に民進党首になったばかりの前原サンがそれに呼応して小池サンと示し合わし、民進党全体を希望の党に合流させるとし、民進党の議員総会でその方針をよしとしました。前原サンは小池人気にあやかろうとし、小池さんは民進党の組織とヒトとカネを我が物にしようとしたんですよね。          

A-san

Hキョージュ ― ところが議員総会でその方針を飲んだ直後に、小池サンは民進党全部でなく、選別をするといいだした。さらに従前の民進党公約からしたら、到底飲めないような踏み絵=政策協定書にサインを求めた。それにサインし、希望の党の公認で立候補するものも多かったが、はじめから排除されたり、踏み絵を拒んだ人たちは枝野サンを中心に急遽立憲民主党を立ち上げた。さらには希望の党が対立候補を立てないという希望的観測から無所属で立候補する人たちも出てきた。     

Aさん ―  希望の党は、当初すごい勢いでしたが、排除の論理を振りかざしてからは、あっという間に失速しました。          

Hキョージュ ― 週刊誌では自民党は大きく退潮、そして希望の党が急伸長という予測だった。それからたった一週間で潮目が大きく変わった。小池サンも排除の論理を言い出さねば、反安倍救国内閣で初の女性宰相誕生となったかもしれないのに、ホント、愚かだよねえ。

Aさん ―  小池サンって外交とか国防に関しては安倍サンと同じなんですね。

Hキョージュ ― まあ権力志向の強い排外主義者で、ご都合主義者だということがよくわかったよ。あの石原サンさえ拒まなかった、関東大震災での朝鮮人虐殺の慰霊への追悼文も出すのを拒んだし、側近の野田某は大日本帝国憲法復活論者だった。今回の一連の騒動の中で、小池サンの都民ファーストは自由な意見交換が許されない上位下達の組織だと暴露された。安倍サンもヒドイが、小池サンのほうがもっと強権的で危険な人物かもしれないことが今回の一件でよくわかったんじゃないかな。       

Aさん ―  ひょっとすると自民党より右かもしれないですね。 いずれにせよ野党第一党だった民進党が無残なことになりました。合流の条件を文書できちんと詰めなかった前原サンが愚かだったんですね。          

Hキョージュ ― ま、彼自身は小池サンと同様の右派だから、内心そうなってもいいとは思ったんじゃないかな。

Aさん ―  で、結局は自民党が圧勝、自民以外では立憲民主党が一人気を吐いただけで、あとは軒並み低迷しました。

Hキョージュ ― だけど自民党の小選挙区での得票率は48%、比例区では33%でほとんど以前から変わっていない。つまり野党が分裂して自滅したとみるべきだろう。 

Aさん ―  希望の党とか日本維新の会というのはそもそも野党なんですか。       

Hキョージュ ― 「ゆ党」だという人もいるね。「よ党」と「や党」の中間だそうだ。     

Aさん ―  55年体制に逆戻りという見方もありますね。昔の自民党と社会党が自民党と立憲民主党になっただけだということでしょうか。        

Hキョージュ ― いや、自民党そのものが変質している。昔の自民党はもっと多様性があった。その主流は、米国の要望を時に躱したり、値切ったり、社会党を利用したりして、軍事大国よりも経済大国を目指すものだった。外交も、米国の顔色をうかがいつつも、独自の平和外交を志したといっていいだろう。さらにその左に石橋派や三木・松村派のようなアジア志向の純正リベラル派もいた。今の安倍サンのような右派は少数派だった。  

Aさん ―  ふうん、で、今後どうなるんでしょう。やはり改憲を目指すんでしょうか。       

Hキョージュ ― そんなことボクに聞いたってわかるわけがない。与党で2/3を越しているから安倍サンはそうしたいだろうが、そうは問屋が下ろさないんじゃないかな。    

Aさん ―  どうしてですか。       

Hキョージュ ― 与党が2/3越えしたのは小選挙区制のマジックのせいだ。仮に国民投票まで持ち込んだとしても、勝てるかどうか怪しいとして、与党内でブレーキがかかると思うけどね。 

Aさん ―  そうか、いったん国民投票で否決されれば、当分改憲は不可能になりますもんね。       

Hキョージュ ― だから野党は挑発して国民投票に持ち込ませるてもあるかもしれない。    

Aさん ―  そんな無茶な。ところで希望の党や参院の民進党はどうなってしまうんでしょう。

Hキョージュ ― レーニンじゃあないけど「行け!歴史の屑籠へ」じゃあないかな。

「脱原発」はリベラルの旗印か?

Aさん ―  ところで今度の選挙では希望の党が突然「2030原発ゼロ」を言い出して驚いたんですが、脱原発かどうかが、リベラルか保守か、右か左かに分かれることになるんですか。社会主義の中国だって原発大国じゃないですか。          

Hキョージュ ― 中国がそもそも社会主義社会で左だという認識が間違っているぞ。ま、それはともかくとして、脱原発かどうかは、保守とリベラルだとか、右と左を分かつものではない。脱原発は、未来の世代にツケを回さないという倫理的な選択だ。だから、保守だって右翼だって脱原発を言う人はいる。      

Aさん ―  そうか、原発を稼働しつづける限り、10万年間管理し続けなればならない高レベル放射性廃棄物がどんどん生み出されて行くということで、そういう文明の在り方を容認するかどうかということなんですね。(→2017夏その3

Hキョージュ ― うん、で、希望の党の「2030原発ゼロ」だけど、小泉サンや小沢サンが知恵をつけたんだろうが、脱原発の旗の下で維新以外の全野党が選挙協力して、一強体制の安倍自民を倒すのならいいと一瞬思った。小賢しく解散に走った安倍サンの心胆を寒からしめると思うと愉快だったしね。

A-san

Aさん ―  でもこれまで小池サンは原発推進派だったんじゃないですか。

Hキョージュ ― 少なくとも脱原発派だったことはない。それにかつて核武装も選択肢の一つだとも言っていた。つまり潜在的な核武装論者と見なせるんじゃないかな。核武装論者はそのためのプルトニウムを産みだす原発に反対するはずがない。 つまり小池サンは脱原発派を取り込むため、本心を偽っての口先だけじゃないかと思わないでもなかった。

Aさん ―  事実、2030原発ゼロをいうその口から、原子力規制委員会が新規制基準に適合するとした原発再稼働は賛成だ、などと言いだしました。

Hキョージュ ― うん、その発言を聞いてからは、公明や維新と同じ口先だけの原発ゼロだと確信するようになった。

Aさん ―  でも立憲民主党の「原発ゼロ」もどこまで信じられるんですか。菅サンは途中から脱原発を言い出しましたが、枝野サンはフクシマ事故を小さく見せようと必死だったし、海江田サンに至っては、経産官僚の言い分に乗って再稼働に邁進していたような気がしますが。         

Hキョージュ ― もう今になれば、原発は懲り懲りだと思ってるんじゃないかな。それが原発ゼロ基本法をつくるという公約だったんだろう。でもキミの言うような疑念もないわけじゃあない。だからこそ、きっちりと原発ゼロの目標年次を公言してもらうとともに、そのための具体的な工程表をまとめてもらおうじゃないか。間違っても連合や電力総連の票欲しさに、脱原発の姿勢を緩めたり、曖昧にしたりなんてしないことを願っている。

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